看護学生の憧れの的、臨床指導者。
でも実際やってみると大変だし、人に教えるって難しいなって感じますよね。
教員免許も持ってないし、そもそも人に教えるノウハウなんて習ってな〜い!
そうですよね。教える方法を習ったことがないから、学生指導を難しく感じてしまうんです。
それなら、実習指導者研修に参加してみてはいかがでしょうか?
私「Yuki」も今を去ること5年前、この研修に参加しました。
今まで受けた研修の中で一番身になっているし、楽しかったし、受けて良かったと思っている研修です。
今日はこの研修を受けると、どんないいことがあるかをご紹介していきますね!
実習指導者研修とは?
実習指導を担当するのに、特別な資格がいるわけではありません。
しかし、実習指導は実はとても重要です。
どんな新人看護師が誕生するのかは、実習で決まるといっても過言ではありません。
本来は、業務の片手間にやっていいものではないのです。
その重要性から、より質の高い実習指導者を育てようと誕生した研修が、実習指導者研修です。
実習指導者研修は、開催する団体により少しずつ研修内容や期間が異なります。
今回は、私が受けた実習指導者研修を中心にご紹介していきますね。
研修目的
看護教育における実習の意義、及び実習指導者としての役割を理解し、効果的な実習指導ができるよう必要な知識・技術を修得する。
開催場所や資格は?
【場所】
各都道府県の看護協会、看護大学、大規模病院など
【受講資格】
現在実習指導に携わっている人、もしくはその予定の人が対象。
経験年数が3年以上、5年以上などと規定されているところもあります。
【期間】
開催時期はその団体によって異なります。
実習指導者講習会の実施要綱で、その講習時間は240時間と定められています。
それを毎日朝から晩までの構成にし、40日にまとめているところもあれば、3クールに分けていたり、合宿タイプや週末のみの開催などスタイルは様々あります。
【費用】
無料、3万円前後、1講義単位での授業料で部分的に受講できるところなど様々です。
合宿タイプはもう少し費用が掛かると思われます。
実習指導者研修で学べること
気になる研修内容ですが、ベースは同じでも開催団体によって、少しずつ内容は変わってくるようです。
私が受けた研修では、主に以下の内容について学びました。
- 教育原理
- 教育心理
- 教育方法
- 教育評価
- 看護論
- 看護教育課程
- 実習指導の原理と方法
- 実習指導の評価
- 実習指導の実際
- 看護師二年課程通信制の教育制度
こうやって並べてみると興味をそそられませんが、看護とは違う教育を専門とする大学の先生の講義などが多くて新鮮でした。
私が初めて「アサーション」という言葉に出会ったのも、この講習を受けたときでした。
アサーションとは自分の思い、感情、状況などをその場にふさわしい形で伝えてみようとすることです。
言葉にすると当たり前に思われるかもしれませんが、やれてるのかと言われたら、なかなかできてないのではないでしょうか。
私はつい、いつも自分より他者を優先してしまい、自分のことを後回しにしてしまいます。
これには相手から攻撃されたくない、対立を避けたいという思いや自分を大切にする重要性を感じられていないということがあります。
しかしこれでは、例えば攻撃的な相手から強い要望があったときに言いなりになってしまいます。
そうではなく、自己肯定をしながら相手も否定しない伝え方を学ぶことで、自分の意見を正しく相手に届けることが出来るんです。
実習指導者研修では実習もあるの⁉
必ずというわけではありませんが、カリキュラムの構成によって実習があります。
「実習」という響きだけでも、拒否反応を起こしてしまうのが看護師ですよね。
私もこの実習というのは嫌で嫌で仕方がありませんでしたが、やってみたら他施設のことを知れたので、なかなか面白かったですよ。
なぜ実習があるの?
実習の目的は、学生の心理を知ることにあります。
自分たちが学生であった頃の気持ちなんて、もう忘れていますよね?
実習をやることであの頃の気持ちを再び思い出し、病棟に来ている学生さんたちの心理を理解しよう!というのがこの実習の狙いです。
もう一つは、他施設での実習指導方法というのも経験することが出来るので、どんなふうに実習指導をしているのかを知る機会にもなります。
気になるその実習の内容とは?
私が受けた実習では、看護学生として自分が所属している病院とは異なる病院で、3日間の実習をしました。
もちろんその病棟の指導者さんにも、看護学生として扱ってもらいます。
受け持ち患者さんを1人決めてもらい、1日の行動計画発表から始まって、指導者さんと共にケアをしたり、カンファレンスをしたり。
とにかく学生と同じ行動をします。
とは言え、指導者さんもやりにくいですよね。
だって、相手はそれなりに経験年数のある看護師ですから。
指導をすると言っても、ツッコミどころのあるプランなんて立ててくるはずもないですから、取り立てて指導するところもないですって感じです。
でも、勝手の違う別の病院ですから、清拭一つにしても物品の置き場や使い終わったらどこに片付けるのかも聞かないと分からないし、方向音痴な私はいつも迷子になってました(笑)
記録に関しても、1日の行動計画の用紙と簡単なアセスメントシートの用紙が指定されていて、毎日手書きで提出です。
さすがにもう徹夜するほどではありませんが、手書きですし、それなりに時間はかかりました。
実習をやってみた感想
たった3日間だったのに、とても長い3日間でした。
普段は少なくても6人とか日勤でみてるのに、1人ですよ?
すぐにやることがなくなっちゃいます。下手にうろうろしてると患者さんからスタッフだと思われて声掛けられるし…
その病棟に居てもなんとなく手持無沙汰で、ふわふわくらげのように浮遊している感じや、指導者さんに話しかけるタイミングをうかがう感じが、本当に懐かしく感じました。
学生の頃に感じていたことを思い出すという意味では、大成功な実習だったと思います。
実習指導者研修を受けるメリットは?
私がこの研修を受けて良かったと感じたことや、大変だったことをまとめてみます。
幅広い知識を得ることが出来た
講師の先生方は、看護師だけではありません。
教育学や心理学の大学の先生や、教育政策研究所の総括研究官という肩書の方など、多岐にわたります。
聞き飽きた看護のフレーズとは、ちょっと違う視点から学ぶ教育学や心理学は非常に面白かったです。
こうした知識やスキルは学生指導だけでなく、新人教育や患者指導の場面でも役に立ちます。
時には日常生活でも使えるなと思うものも。学校の先生になるのも悪くないかもなぁ…なんて少し思ったりもしました。
学生気分が味わえた
毎日、朝から夕方まで授業の日々。こんな毎日は、看護学校での生活以来のことです。
気分は学生でした。仕事のように残業があるわけでもない。
毎日決まった時間には終わって帰れる。これだけでもどれだけ幸せだったことか。
しかも、毎日勉強してそれでお給料もらえてるんだから、なんてありがたいんだ!
と思うと同時に、お金を貰って勉強してるんだから、ちゃんと学ばなくちゃというプレッシャーも少しはあったり、なかったり。
看護学校もう辞めたい!つらいテストや実習をうまく乗り切るポイント
他施設の看護師と出会えた
いろんな病院から看護師が集まってくるので、とてもいい情報交換の場にもなりました。
私は5年目でこの研修を受けたので、同じ研修生の中では一番経験年数が浅く、皆さん先輩ばかりだったので、余計にいい刺激を受けました。
他施設の看護師と世代を超えて友達にもなれたりして、今でもその人たちとはつながっています。
プライベートでフェスに一緒に行ったり、飲みに行ったりする遊び友達になりました。
違う施設の人だからこそ、素直に言えたり相談できたりすることもたくさんあって、そういう仲間を作ることが出来る場としても、この研修は価値があると思います。
通常業務から離れ、気分転換になった
いつもの慌ただしい日常と違い、毎日規則正しいリズムで生活できるし、時間に追われることもない。
患者さんの事、同僚の事、医師の事、全部一旦忘れて、目の前の学習だけに集中できる環境は本当にありがたかったし、とてもいい気分転換になりました。
命を預かる緊張感も忘れて、こんなに楽しい毎日を送れたのは何年ぶりだろう!って感じでした。
夜勤からの解放というのも大きかったですね。
毎日、夜寝て朝起きる生活をしていたら、体調もすこぶるよかったです。
夜勤なんて、やっぱり寿命を縮める働き方でしかないですね。
実習指導者研修を受けるデメリットは?
事前課題や宿題が出る
授業だけの時は宿題が出るといっても、数枚のプリントを事前に読んで来いとかそれくらいでした。
でも、実習中は学生と同じような記録も書かなくてはいけないし、グループワークによる演習が時間内では到底終わらなくて、みんなでファミレスとかで作業をしたりもしてました。
まぁ、それはそれで楽しい思い出でもあるんですけどね。
研修の合間で病棟勤務に戻った時の患者把握が大変!
私が受けた研修では、全スケジュールを3クールに分けて行うスタイルだったので、2週間研修に通っては2週間病棟で働き、また2週間研修に通う…というスケジュールでした。
そうすると、研修と研修の間に病棟勤務に戻ると、急性期の病院なので患者の大半が入れ替わっているんですよね。
浦島太郎状態で、患者さんの把握が大変でした。特に病棟勤務に戻った初日が夜勤の時は鬼かと思いました…
実際の指導の場で役立てたこと
私がこの研修で学んで、病棟で取り組んだことはいくつかあります。
特に私が大切だと思ったことは、実習環境を整えるということです。
それは実習に必要な物品を確保するだけではなく、病棟スタッフ全体で実習指導を受け入れていくということについても改善が必要だと考えました。
また、学生さんとの人間関係の作り方についても、意識して変えていかなくてはいけないと感じました。
そうしたことを踏まえて、私が病棟で取り組んだ4つのことをご紹介します。
病棟全体で学生指導を受け入れる雰囲気づくり
問題だったのが、実習指導に関わる人以外のスタッフの無関心さでした。
私がいた病院では、実習指導に関わるスタッフは固定され、それ以外のスタッフが実習に関わることはほとんどありませんでした。
そうすると指導の質は保てても、病棟全体で学生さんを受け入れるという雰囲気作りがうまくいきませんでした。
そこでまずは、学生さんの挨拶の時には全員手を止めて、学生さんの方を向くということを徹底してもらうように声掛けしていきました。
実習が始まる前に、どんな実習で何人の学生さんが来て、どの患者さんを担当しているかということを病院内のメールでお知らせしたりもしました。
休憩室では、学生さんがやったことを話すようにもしていきました。
すると、次第に実習に関わる人以外のスタッフから、学生さんがこんなことしてたよと報告してくれたり、困っている学生さんに声をかけてくれたりするようになりました。
実習に必要なアイテムを確保する
学生さんが使う用の物品にはすべて学生用というシールを貼り、置き場も別にしました。
そうすることでスタッフが勝手に使うということがなくなり、学生さんも自分たち専用の物品が揃っていることで安心して使うことが出来ます。
普段はIC部屋として使っている面談室を、学生の記録室として実習中は使用してもらうようにしました。
こうすることで病棟内で身の置き所がなく、ふわふわと漂う学生さんというのがなくなり、居場所を確保することができるようになりました。
これも学生さんにとっては安心感につながります。
ウェルカム意識を伝える
実習が始まる前にウェルカムボードを作成し、一人一人の名前を書いて「ようこそ○○病棟へ! 」「今週も頑張ろう!」などとメッセージを貼って、実習指導者一同で学生さんを歓迎しているという意思を伝えるようにしました。
待ちの姿勢をやめる
指導をするときにも、研修で学んだことから意識していることがあります。
学生さんの名前を覚えて、ちゃんと名前を呼ぶこと。
こちらから関係を作っていく努力をするんです。その一つとして名前を覚えて呼ぶことで学生さんは自然と心を開いてくれるようになります。
学生さんからのアクションを待つのではなく、こちらからアプローチしていくことも意識しました。
昔は指導者は学生から声をかけられるまで待っていたり、カンファレンスでも意見が出るまで沈黙になっても、待ち続けていました。
しかし、それでは学生は委縮するばかりで、いい効果は得られません。
ただでさえ、コミュニケーション能力が高いとは言えない、まだ未熟な学生ですから、こちらから声をかけたりカンファレンスで話を振ってあげたりすることが大切です。
その方がカンファレンスも意見が出て、盛り上がったりするんです。
実習指導者研修は学生指導にとても役に立つ研修だった
実習指導者が学生指導を難しいと感じるのは、教育について学ぶ機会が無かったからです。
実習指導者研修では教育を基礎から学び、今の若者の特徴にあった指導の方法を学ぶことが出来ます。
なので、これから学生指導をする上で、とても役に立つ研修であることは間違いありません。
現在はこの研修を受けたからといって、何かのライセンスになるということではありませんが、病院によっては研修を受けた人が実習指導に携わるもの、と定めているところもあるようです。
そして、この研修で学べることは学生指導のみならず、様々な場面で役に立つ知識ばかりなので、看護師としてのレベルアップにも役立つこと間違いなしですよ。
あなたも学生指導に悩んでいるのなら、実習指導者研修をぜひ受けてみてはいかがでしょうか。
看護師記事一覧はこちら↓
看護師歴11年の私が教えるナースの悩みまとめ!賢い転職・働き方のコツとは?