看護研究って、数年看護師をやっていると必ず上司から言われる、避けて通れない難関です。
私も4年目の時から3年かけて看護研究をやってました。
正直、看護研究って負担ですよね。
ただでさえ毎日時間に追われ、夜勤もやって忙しいっていうのに、それとは別に研究ってなんでそんなことやんなきゃいけないの?って思ってしまいますよね…
上司にやりなさいと言われているからやる…という感じで、主体的に始めてないので余計に負担が大きく感じるんですよね。
やらされている感が強いと、なんで看護研究ってやらなきゃいけないのって思ったりもしますよね。
私も自分がやっているときそう思っていましたよ。やりたい人がやればいいじゃないか。
こんな強制でやるのはおかしい!そうは思っていても、上司に言う勇気はなかったのですが…
今回はそもそも看護研究ってなんでやるの?そんな疑問にお答えしつつ、大変な看護研究をどうやったら上手に仕事と両立できるか、そのコツをご紹介したいと思います。
看護研究の意義
ただでさえ毎日仕事で忙しいのに、どうして看護研究もやらなくてはいけないの?というふうに考える人もは多いと思います。
看護研究に取り組もうにもその必要性が分からなければ意欲も湧かないと思います。
やらされている感しかなかったら苦痛でしかないですよね。
そこでまずは、なぜ看護研究は必要なのかを知りましょう。それが理解できると少しは看護研究に対して意欲も出てくるのではないかと思います。
看護の質を高める
看護研究を行う目的で一番重要なのは、看護の質を高めることにあります。
今行っている方法が最善であるのか、日進月歩の医療の世界では昨日の常識が今日の常識とは限りません。
治療法が変われば看護も変わってくるかもしれません。
看護研究の根本はより良い看護の探求です。今よりさらに良い看護にしていくために研究を行うわけです。
それを何故臨床で行わなければならないのか、それは看護は実践こそが全てだからです。机上の空論で看護はできません。
研究なんて専門家の仕事だというのももちろん一理ありますが、それでも臨床の看護師に看護研究が求められるのは、より実践的な看護研究をするためなんですね。
看護の知識を共有する
看護研究はあるテーマについて調べたり、試したり、色々試行錯誤した結果、こういう方法が良かったということを論文にまとめます。
それを学会で発表したり、現代で言えばインターネット上に公開したりすることで、より多くの看護師とその知識を共有することが出来ます。
日々の業務の中で、カンファレンスなどで患者さんに対しての看護の方法についてディスカッションすることって多々あると思います。
しかし、そこでどんなにいい方法が生まれたとしても、カンファレンスだけで終わってしまったらその患者さんにしか実践されませんし、精々がんばってもその病院内でしか共有されませんよね。
でもそれをより深く掘り下げて論文にすることで、他病院の看護師にも共有され、同じようなケースの患者さんたちみんなにその方法を実践することが出来るようになります。
これは他の業種と違うところですね。
一般企業では普通はいい方法を見つけたらその会社の企業秘密となりますが、看護の場合はいい方法を見つけたら全国各地、もっと言えば世界中の看護師と共有して看護全体の質を高めようとしていくのです。
より多くの患者さんにより良い看護を提供したいという看護界の思いがそこにはあるのでしょう。
研究的視点を養う
看護研究は比較的年数の浅い看護師であっても行いますよね。
自分の仕事もまだちゃんとできないのに、看護研究なんてできないよと思われるかもしれません。
しかし、年数が浅いからこそ新鮮な視点を持つことが出来るとも言えます。
そして常に自分の看護はこれでいいのか、もっといい看護はないのだろうか、という現状に満足せず探求心を持つよう教育する目的もあります。
看護師自身が自分の看護に疑問を常に持つということは、看護技術の向上に欠かせません。
それは新人看護師であっても、ベテラン看護師であっても同じです。
ベテランであればあるほど自分の看護に自信を持ち過ぎて、新たな方法を受け入れない傾向が表れやすいです。
そうならないためにも、看護研究を行い、常に研究的視点で自分の看護を振り返る癖をつけるという目的もあります。
主にはこういった理由から、どの病院でも看護研究に毎年取り組んでいるわけですね。
研究テーマの見つけ方
看護研究の意義がわかったところで、次は研究テーマの見つけ方です。
いざ、研究を始めようと思ってもこのテーマ決めは重要かつ悩むところですよね。
これさえ決まってしまえばあとはやるだけですから、ある程度方向性が固まります。
このテーマ決めは、研究をスムーズに進めるための重要なカギとなります。
テーマを見つけるって?
看護研究には大切な意義があると分かっても、現実では日々の看護の疑問を自発的に研究するという機会は少なく「看護研究の順番が回ってきたから何か取り組まなくちゃ」とテーマを探す人がほとんどだと思います。
そもそも研究するテーマを探すということ自体が本来はおかしい話なんですが、せっかくなら前向きに楽しく取り組めるよう、興味のあるテーマを選定しましょう。
それが看護研究の大変さを減らす、第一歩にもなります。
日々の看護の中での疑問
研究テーマと言われると、何か大きなテーマを見つけなくてはならないような気がしてきてしまって、何が研究テーマとして適しているのか分からなくなるってことがよくあると思います。
でも臨床で行われる看護研究は、とにかく日々の看護の中から生まれてくるものなんです。
もっといい方法はないかなとか、これとあれってほんとはどっちの方が効果的なのかなとか、こういう患者さんにはどうしたらいいんだろうとか、日常の看護の中のちょっとした疑問や困ったことが全て看護研究のテーマとなりえるんです。
その漠然とした疑問や困ったことを整理してみましょう。
- だれについて
- どうなってほしいのか
- そのためには何が必要か
あなたが抱いた漠然とした疑問に対し、こういったことについてまずは整理してみましょう。
ここで注意したいことはどうなってほしいかや、何が必要であるかは看護の範囲で解決できることに限定することです。
極端な話、どうなってほしいかの部分に病気を治してほしいと当てはめても看護ではどうすることも出来ませんよね。
病気を治すということに付随する事柄、例えば治療を前向きに取り組んでほしいとか、副作用の症状を和らげたいとか、こういったことであれば看護でも取り組むことが可能になります。
まずは自分の疑問についてあらゆる角度から検討してみることが大切です。
たとえばこんなこと!
私が取り組んだ看護研究は当時整形外科で勤務をしていたので、人工膝関節置換術を受けた患者に対する効果的なクーリングの方法でした。
最初の疑問はこうです。
「患者さんは各々工夫して足の下にアイスノンを置いてみたり、上に乗せたりして冷やしているけれど、どの部分にどのように当てると一番痛みを軽減することが出来るんだろう?」ということでした。
着目点としてはいいものだったと思うんですよね。
患者さんたちは大きなアイスノンを紐で膝に括り付けていたり、膝の下に置いたり、額用のマジックテープ付きのアイスノンを二つ巻き付けていたりと、いろんな方法をとっていました。
そういうのを色々見てきて、なんか効率的な方法ってないのかなって思ったんです。
でもこの研究は、はっきり言って大変でした。
まず、患者さんに直接実験するような研究は、安全面への配慮や倫理的配慮など関門が多く、実施許可が出るまでに相当な時間が掛かりました。
さらに、痛みの度合いがテーマとなっていますが、痛みの感じ方は人それぞれなのでそれを評価するのにいくらスケールなどを用いても、どうしてもバラつきが出てしまいます。
患者さんの認知力によっても変わってきてしまいますしね。
通常、1~2年程度で終わるはずの看護研究が、3年も時間がかかってしまったのはそういった理由からでした。
なので、どういったテーマで研究するかということを考えるときに、現実的に研究することが可能であるか、安全な方法で検討する方法があるかどうか、客観的な評価が出来るかということも考慮しながら選んだ方がいいと思います。
忙しい業務と上手に両立するには
どんな研究を行うにせよ、看護研究は日々の業務と並行して行っていきます。
これがまた大変なんですよね。メンバーみんな夜勤もしてるし、なかなか全員が顔をそろえることも出来なかったり。
うまく仕事を分担できず、気が付いたら1人で抱えることになってしまったり。
こうした悩みは尽きないと思いますが、少しでも看護研究と日々の業務を上手に両立するためのちょっとしたコツをご紹介します。
時間を決める
忙しいみんなの貴重な時間を合わせて話し合いをするときには、極力短時間で必要なことを話し合えるよう、30分とか1時間とか予め時間を決めて、延長しないことが大切です。
決められた時間で必要なことを話し合うためには議題を予め出しておき、優先順位も決めておくことが大切です。
みんなで話し合いをするときはきっと休みなのに出てきた人、夜勤明けなのに出てきた人もいるでしょう。
そうしないとなかなかみんなは集まれませんよね。
それでダラダラと話も脱線しながら、結局何が決まって何が決まらなかったのかもわからないような話し合いじゃ、余計に看護研究が負担になってしまいます。
時間を意識するため、集まって何かを議論するときはタイマーを使って時間を区切るといいですよ。
時間内に終わらなかったものは次に持ち越すなど、無理にでも時間で終わらせるようにして続けていく事で、自然と時間内に終われるようになっていきます。
理想は事前に議題をみんなに知らせて、各自が議題に対する意見をまとめておくと益々スムーズになると思いますが、そこまでに至らなくても、話し合いを始めるまでに今日は何について話し合いをするのか、どの順番で話し合うかを明確にしてから開始し、終了時には結論をまとめて、共通認識にしておくということは意識しましょう。
役割分担
不規則なシフトで働く看護師たちが集まって何かに取り組もうとする場合、常に全員で一緒に作業をするということは不可能に近いですよね。
そこで大切なのが役割分担です。
この役割分担も失敗すると、みんなが自分の分担領域のことしかわかってなくて、全体像を把握している人が誰もいないとか、リーダーの采配がうまくいかずひとりに多くの負担がいってしまったりとうまくいかなくなってしまいます。
役割分担を行う際は、みんなが全体像を把握しながら自分は全体の中のどの部分を担当しているのかが分かるように分担することが大切です。
そのため、全体のスケジュールをまずは立て、その中で各項目に分担した人の名前を書き込んでいくなどして、全体像と各部分の担当者が一目でわかるような表を作っておくといいと思います。
更に終わった作業には終了チェックを入れられるようにしておくと、更に進捗状況が把握しやすくなりますね。
そしてリーダーになった人は、常に進捗状況を把握するように心がけることが重要です。
私もこの役割分担が下手で、結局自分一人が多くの仕事を抱えることになってしまいました。
そうなると、メンバーたちは状況が分からないから益々人任せになってしまうんですよね。
もっとうまくみんなに役割を振ることが出来ればよかったなと反省しました。
メンバーとの連携
メンバーとの連携は非常に大切です。これがうまくいかないと、人間関係も悪くなって仕事もやりにくくなってしまったりということもあります。
そういったことにならないよう、メンバー同士でよくコミュニケーションを図ることは大切です。
また、 数年がかりで看護研究をやっていると途中でメンバーが院内異動になったりしてメンバー構成が変わることもあります。
途中から参加したメンバーであっても連携が図れるようにすることも大切です。
スムーズな連携を図るためにはコミュニケーションツールを決めておくと良いですね。
連絡ノートのようなものを作ったり、院内メールを使って進捗状況の報告をお互いにするというのも良いと思います。
注意しなければならないのは、携帯メールやSNSなどを使って連絡を取ることは控えましょう。
患者さんのことに直接かかわることでなくても、もしも外部に情報が漏れた場合、問題になります。
それに、個人的なメールなどを使うと休日でも業務連絡が届き、ストレスに感じることにもなります。
仕事とプライベートのメリハリをつけるためにも、院内メールなどのツールを活用するように統一しましょう。
おわりに
看護研究って大変だし、任命されると憂鬱になってしまいますよね。
だけど、自分が調べたり、検証したりしたことが自分の病棟だけでなく、様々な病院で活用されたり、応用されたりしてより多くの患者さんの役に立つかもしれないと思ったらすごくないですか?
患者さんに直接何かを行って検証するような研究は、許可が下りるまでがなかなか大変なので、よくみんなが行う研究と言えば、職員に対するアンケート調査などが多かったりします。
でもそういう研究ばかりでは看護実践への応用には限界があると思います。
せっかく看護研究を行うのであれば、多少は大変でも自分が感じた疑問を大切に研究方法を選んでいただけたらと思います。
研究メンバーでしっかり連携を図りながら役割分担をして、限られた時間を有効に使って研究を進めて行きましょう!