採血にせよ、ルート確保にせよ、患者さんに針を刺す行為に苦手意識を持っている看護師は少なからずいると思います。
痛みを伴うものですし、患者さんとの信頼関係にも影響してくるものですから、プレッシャーは相当ですよね。
患者さんたちには、看護師はみんなプロなんだからできるものと思われているだろうし、そう思うと益々緊張してしまいます。
私Yukiも、新人の頃は苦手意識が強く、ルート確保もなかなかうまくなりませんでした。
入ったと思ってもすぐに漏れてしまって、刺し直しになったり。
患者さんにはいつも申し訳ない思いと、自分自身に対してもどんどん自信を無くしていました。
練習したいと思っても練習台になってくれる人にも痛い思いをさせてしまうことになると思うと、なかなかお願い出来なかったりもしました。
そんな私だからこそ、注射に苦手意識を持つ人の気持ちがよく分かるので、注射がなぜ苦手になってしまうのか、得意な人とそうでない人は何が違うのかそういったことをお伝えしていこうと思います。
注射に苦手意識を持っている看護師必見ですよ!
注射が苦手な人の特徴
注射に苦手意識を持つ人には、同じような特徴があります。
私の経験上、感じるものではありますが、自分が当てはまるかどうか見てみてください。
血管を探すとき、人差し指一本
注射の成功を左右するのは、まず血管の選定です。
これが一番重要ですが、注射に苦手意識を持っている人はこの血管の選定がうまくありません。
あなたが血管を探すとき、患者さんの肌にどう触っているかをイメージしてください。
人差し指1本で探していませんか?
1本の指で探すとその指が触るところには血管があると確認できますが、その先の走行がわかりません。
怒張していてわかりやすい血管を選ぶことも大事ですが、点滴のルート確保の時などはとくに走行を確かめて、どういう向きに針を入れたらいいのかを確かめる事も重要です。
走行が分からずに針を刺すと、刺したときには逆血があったのに針を進めたら漏れてしまったという失敗につながります。
走行と同時に血管の太さや深さも大切です。
それらを知るためにも、2本から3本の指を血管に対して横に当てながら確かめることが大切です。
刺した位置から血管に届くまでの距離がイメージできていない
注射が苦手な人は目に頼りがちなところもあります。
怒張して見えているところの真上から針を刺してしまうのです。
そうすると針は刺さった後数ミリ中に入っているわけですから、針の先端は血管を突き破っている状態になりかねません。
目指す場所の数ミリ手前から刺す。これも基本ですがとても大事です。
そして、血管の深さについてもイメージできていないこともあります。
浅い所にある血管に刺すときには針を寝かせながら刺さなくてはいけないですし、深い所にあるときは気持ち針に角度を付けて刺入しなくてはなりません。
血管の深さによって、角度を微調整することが大切です。
針が刺さった後、体の中のどのくらいの位置に針先があるのか常にイメージをするように心がけましょう。
今、自分が刺した針の先はこの辺だということを想像すれば、血管まであとどのくらいかというのがわかるようになってきます。
慎重になりすぎる
失敗したらどうしよう、痛いと言われたらどうしよう、そういうプレッシャーからすごく慎重になるのは仕方ないのですが、駆血して5分も10分も血管を探すようなことはしないようにしましょう。
そして手技にあまりにも時間をかけすぎると患者さんも疲れてしまいますし、不安になってしまいます。
そういうのは以心伝心伝わってしまい、尚更自分にプレッシャーを与えることになります。
適度にコミュニケーションも取りつつ、お互いの緊張感をほぐしながら血管選定をすることが大切です。
針を刺す瞬間もゆっくり刺し過ぎると痛みが増してしまいます。
針を刺すときは一思いに行きましょう。
注射が得意な人の特徴
注射が得意な人にも特徴があります。これも私の経験談ではありますが、得意な人の特徴をマネできれば上手になるかもしれませんよ。
血管の走行や深さを把握できている
注射が得意な人はとにかく血管を見つけるのが上手です。
上手な人が血管を探すとき、目で探してはいません。
血管の走行や深さ、太さを指で触ることで推し量ることが出来ます。
これは経験がものをいうところでもあるので、いろんな人の血管を触らせてもらうことが一番だと思います。
ただし、健康な若い人の血管をいくら触っても、患者さんの血管とは弾力などが全然違います。
できれば、患者さんの血管をたくさん触った方がいいと思います。
針を刺すときは素早く刺す
注射が得意な人は血管選定には時間をかけたとしても、いざ穿刺するとなったら早いです。
針を刺すときはある程度の潔さが大切です。ゆっくり刺せば痛みが増しますし、血管に逃げられることもあります。
そして基本ですが、針先を確認して必ず斜めの断面が上に来るように刺しましょう。
あまり勢いが良すぎると、今度は血管を突き破るのでその辺のさじ加減も大事です。
経験を積めば血管に入ったかどうかが、刺した感触で分かるようになります。
刺したときに痛く無ければたとえ失敗したとしても、もう1回やってもらってもいいかなって患者さんだって思うでしょう。
あまり痛く無く刺せるというのは結構重要です。
血管の出し方が上手い
よく手のひらで軽くたたいたり、アルコール綿で末梢から中枢にゴシゴシこすったりする人がいます。
でもそれより腕を上に挙げてもらって把握運動を数回やってもらい、手を握った状態で下ろしてもらう方が血管はよくでます。
手のひらの静脈血を把握運動をすることで中枢に送ります。
そして手を握った状態で下に下してもらうことで、手首から前腕にかけて静脈に血液を留め、血管を怒張させる効果があります。
ホットパックなどで保温するというのも非常に有効なのでおススメです。
無理やり血管が見えづらい所に穿刺するより、より見えやすい状態にした方が同じ血管に刺すのでも成功率は違います。
ひと手間でもそれをするほうが、よほど時間を短縮できますよ。
注射が上手くなるコツ
注射の技術は必ず上達させることが出来ます。一番はより多くの経験を積むことだとは思います。
ですが、あまり注射をやる機会のない職場に勤めている場合はなかなか経験を多く積むというのは難しいかもしれません。
でも、経験を積む以外にもいろいろとコツはありますのでそのコツをご紹介します。
失敗して先輩に交代したら手技は見学しよう
何度も何度も刺して、血管を潰してしまう前にまずは潔く諦めましょう。
その方が患者さんにとっても安楽です。そしてほかの人に頼んだら人任せにせず、必ずその人の手技を見てみましょう。
どうやって血管を探しているのか、どういう探し方をしているだろう、どこを見ているだろう、どうやって触っているだろう、そしてそれは自分のやり方とどう違うだろうかを考えながら見てみましょう。
そうすることでうまい人の技術を盗むことが出来ます。
早く上達するにはまずうまい人にあやかる。これが一番いいと思います。
それに隣で見ていると、うまく見つけるコツなんかも教えてもらえる事も多いと思います。
血管は目で探すのではなく、手で探す
一目見て怒張していたり、青くうっすらと見えているような血管に刺したくなりますが、血管は目で探してはいけません。
怒張していると思ってもそれはほんの一か所だけで、その先は蛇行しているかもしれません。
青くうっすらと見えていて走行が分かっても、すごく細い血管かもしれません。
繰り返しにもなりますが、血管を探すときは指の感触で探す、これが基本です。
目で見えるような血管の方が大概は上手く入りません。
目で見ても分からないけれど、触ると確かに感触があるという血管の方が太くて安定していることの方が多いです。
なので、ここだという場所を見つけたら、そこから目線を外さずに針の準備をして刺せるように、血管を探す前にすべての物品の準備をしっかり整えておくということが大切です。
つまり、作業域の確保もかなり重要です。
面倒くさがらず、しっかりと広いスペースを確保し、自分の視野にすべての物品を配置できるように整えるようにしましょう。
イメージトレーニングを繰り返す
苦手意識が強いととても緊張してしまいます。
そうすると手が震えたり、頭が真っ白になってしまったりして入るものも入らなくなってしまいます。
そうならないためには、イメージトレーニングを積みましょう。
実際のものを使って、手を動かし、患者さんに説明することも実際に声に出して言いながら行ってみましょう。
繰り返すことで考えなくても自然に体が動くようになります。
そこまでいけば多少緊張していても体が覚えているので、動作がスムーズに出来ます。
可能であれば、同僚スタッフの腕を借りて練習させてもらえると尚いいです。
ただ若い人と高齢者では血管の弾力も皮膚の弾力も違うので、そこは念頭に置いておいたほうがいいですね。
こんなことにも気を付けよう
では最後に、血管選定のポイントやこんな時はどうするかについてお伝えします。
血管選定で注意すること
ルート確保の場合、血管はとにかく真っ直ぐなところを探す。これが基本です。
でも、たとえ真っ直ぐであっても避けるべき場所もあります。
それは、関節付近と神経や動脈が近い場所です。具体的には、親指側の手首付近と肘周囲です。
手首や肘は腕の動きによって血管が動きやすいので漏れやすくなってしまいますし、滴下も安定しません。
親指側の手首は確かに血管が怒張しやすく見つけやすいのですが、近くに動脈や橈骨神経が走行していてリスクが高いので、出来るだけ避けるべきです。
採血の場合は第一選択が肘の正中静脈ですが、尺骨側の尺側静脈は尺骨神経が近いので慎重に刺しましょう。
採血の途中で逆血がなくなったら
採血をしているとき、急に逆血がこなくなるってこともありますよね。
あれ?今まで引けてたのに、なんで⁉って焦ったりしてはいけませんよ。
針先が血管壁に当たってしまっているだけかもしれません。
そういう時はすこーしだけ針先を動かしてみましょう。でもむやみやたらと動かすと血管を突き破ってしまうので慎重に。
そして針先が動かないように、しっかりと注射器を持つ自分の手を患者さんの腕に密着させてしっかり固定することも大切です。
腕が難しいから足にルートはいいの?
何度も刺していたりすると腕の血管がつぶれてきてもう刺すところないよって感じにもなってきたりもします。
それなら足はどうかなって思いますよね。しかし、足にルートを入れると血栓ができやすくなると言われています。
ベッド上で歩かない人であれば尚更です。
どうしてもという時は仕方ないかもしれませんが、ベッド上の人だから足に刺しても邪魔にはならないだろうと安易に選択しないようにしましょう。
さいごに
いかがでしたでしょうか。少しでも注射に対する苦手意識がうすれましたか?
絶対に1回で成功しなくてはいけないと自分にプレッシャーをかけないようにすることも大事だと思います。
大げさに言えば、失敗してもいいんだ、1回で入らないことだってあると思いながらやるほうが案外すんなり入ったりもします。
私もこれ入らないかもなと思いながら刺すと大抵入りません。
自信を持ってやると不思議と見えない力が働いてうまくいくものです。
それでもどうしても苦手意識を克服できないときは、注射の機会が少ない職場に転職するというのも一つの手段かもしれません。
注射が出来なきゃ看護師じゃないというわけではありません。
注射が出来なくたって、それ以外の技術で人より勝っているものがあれば立派です。
看護師は注射が全てというわけではないので、得意なところを伸ばしていくという考え方でもいいと思います。
大きな大学病院だとルート確保は研修医の役割で、看護師はほとんどやらないというところもあります。
そういうところなら採血だけでいいので、採血だけなら同じ針仕事でも難易度は下がるのでやりやすいかもしれません。
自分に合った働き方ができるよう、職場環境は事前にチェックしておくことが大切です。