こんにちは。Yukiです。
看護師は病院だけにとどまらず、いろんな場所で活躍できる職業ですよね。
様々な場所で働けますが、その中の一つに老人ホームという場所があります。
忙しい病院勤務を続けていると段々心も体も疲弊して、老人ホームのようなゆったりした場所で、高齢者の方々とゆっくりお話したりしながら、のんびり働きたいなぁ…って思ったりしませんか?
私は幾度となく、そういう妄想をしていました。
そして派遣看護師となり、一度はやってみたかった老人ホームで早速、働いてみました。
実際働いてみると、夢と現実は違うなと感じるところもあり、やっぱり病院よりいいなと思うような部分もありました。
そこで今回は、老人ホームで働く看護師の役割や気になるお給料事情、施設で働く魅力などをご紹介したいと思います。
老人ホームの種類
一般的に老人ホームと呼ばれている施設には大きく分けて3種類あります。
特別養護老人ホーム
公共団体が運営する老人ホームで、要介護3~5の65歳以上の人が対象です。
主には治療や入院の必要はなないけれど介護度は高いという人が多いイメージですね。
公共団体が運営しているため料金が比較的安く、施設の空き待ちをしている人もたくさんいます。
看護師の配置は100人に対し3人は配置するようになっています。
夜勤はありませんが、夜間のオンコール体制はあります。
有料老人ホーム
民間団体が運営しているため、施設の特色も様々です。
要介護1~5の人が対象ですが、施設の特色によって自立度が高い人が多かったり、介護度の高い人が多かったりと様々です。
看護師の配置は、30人に対して1人となっています。
こちらも夜勤はありませんが、夜間のオンコール体制があります。
介護老人保健施設
各都道府県が運営している自宅に帰ることを目標とした施設です。
要介護1~5の人が対象ですが、リハビリや医療ケアが必要な方が多いので上記二つの施設に比べ、医療行為が多いのが特徴です。
看護師の配置も多めの100人に対し9人となります。
医師も常駐しますが、こちらは夜勤があります。
今回は、特別養護老人ホームと有料老人ホームで働く看護師のお話を中心にしていきたいと思います。
老人ホームで働く看護師の役割
病院と老人ホームなどの施設で働く看護師の大きな違いは医師が常駐しているかいないかだと思います。
そして、病院と違い圧倒的に看護師の数が少ないです。
そのため、病院と老人ホームでは看護師の役割は大きく異なります。
入居者の健康管理
一番のメインはこれですね。
基本的には入院や治療の必要がない人たちですが、高齢者ですのでいつ何時状態が変わるかは分かりません。
バイタルチェックはもちろんですが、日常生活に必要な医療行為も含まれます。
たとえば、インスリンや胃ろうからの経験栄養などです。
私が働いた時はとにかく軟膏の塗布や目薬が多くて、1日中目薬をさしていた気がします(笑)
褥瘡がある人もいるので褥瘡の処置を必要とする人もいます。
医師との連携
常駐の医師はいませんが、提携している医師が訪問診療を行います。
その回診について指示を仰いだり、具合の悪くなった入居者の対応を医師と連絡を取りながら行います。
常に医師が近くに居るわけではないので、診療に来た時に的確な情報をスムーズに伝えることが求められます。
急変時の応急処置と病院搬送時の付き添い
何かあったとき、判断を求められるのが施設に勤める看護師の大きな役割の一つです。
医師との連携がある場合、医師に連絡をして指示を仰ぐことも出来ますが、急変の場合はまずその応急処置をするのは看護師です。
救急車を呼ぶにしても到着するまでの蘇生処置などは行わなくてはならないのでそういったスキルは必要です。
老人ホームで働く看護師の1日
病院で働いているとほとんどメインと言ってもいい業務が患者さんの日常生活の援助ですよね。
しかし、私が派遣で働いた施設では、利用者さんの日常生活の援助は主に介護職員さんたちが行ってくれます。
施設によって業務のすみわけが出来ていないところもあって、介護職員さんたちと同じ仕事をしながら看護業務も行うような施設もあるようなので、そこは入職前に確認が必要です。
今回は私が働いた施設での1日の流れを中心にご紹介したいと思います。
ちなみに利用者さんの数は100人近くいたため、看護師は3人体制でした。
9時:朝礼
夜勤の介護職員から利用者の状況報告を受けたり、今日の予定などを確認します。
時には受診のために外出する利用者さんがいらっしゃったりしてその準備が必要なこともあります。
そしてこの時に渡されたのが「インカム」です。
知ってます?イヤホンが付いたトランシーバーです。よく飲食店の店員さんが付けてるようなあれです。
この施設は3階建てでとても広い施設だったので、このインカムを使って職員同士が連絡を取り合っていました。
9時30分:バイタルチェック
利用者さんの一覧に朝介護職員さんが測ってくれたバイタルが書かれています。
看護師はそれをみて入浴の予定のある人たちの入浴の可否を判断します。
バイタルに変化がある人は看護師が検温に行き、状態観察をします。
受診に行った方がいいか、頓服などを使用し様子を見るかなどの判断を行います。
10時:目薬、軟膏処置
これがとにかく多かったです。
二人がかりで手分けして目薬さしたり軟膏を塗ったり、ストマの観察・交換などの軽い処置を行っていきます。
その間、インカムを介してお風呂場から呼ばれ褥瘡の処置をしたりもします。
10時:回診介助
目薬などの処置を行う一方で、1人の看護師は訪問診療に来た医師の回診について利用者の健康状態を伝えたり、指示を受けたりします。
利用者さんの状態把握が必要なので、常勤の看護師さんが行っていました。
12時:昼食
食堂に利用者さんたちをご案内してくれるのは、介護職員さんたちがやってくれます。
みなさんに配膳を行い、食事介助を行います。
私が働いた施設では胃ろうの人などはいらっしゃいませんでしたが、施設によってはそういった方の経管栄養の準備から投与も行うと思います。
内服管理も看護師なので、食前薬や食後薬の内服介助も行います。
14時:目薬、軟膏処置
自分たちの昼食をはさんで、再びの目薬時間です。回診についていた看護師さんは記録を書きます。
私は毎日午後に足浴と軟膏処置をセットで行う利用者さんの処置に入りましたが、お話が好きな方で、1時間ほどかけて足浴と軟膏処置を行いました。
こんなに時間をかけて行えるのもゆったりした施設時間ならではのことかもしれません。
17時:夕食
昼食同様に夕食も介助を行います。施設の夕食は17時30分ごろと早め。
18時までの勤務でも夕食の食事介助までが勤務に含まれます。
施設によっては午後にレクリエーションの補助とか介護職員さんの手伝いが入る施設もあると思います。
老人ホームで働くメリット
老人ホームで働いた場合のメリットはなんでしょうか。
ゆったり関われる
何と言っても、病院との大きな違いは1人ひとりとゆっくり関われるということではないでしょうか。
私は単発の派遣での勤務でしたので利用者さんのことが分からず、てんやわんやでしたが、利用者さんたちのことを覚えればそんなに大きな変化はないですし、病院のように検査や手術やリハビリなどで時間に追われることもなく、生活の場に密着した看護が行えます。
ただし、介護職との業務のすみわけが出来ていなかったり、施設の方針によってより介護度の高い人や病院との連携が取れている施設では人工呼吸器や気管切開をしている利用者さんがいるところもあるようです。
入職する際には介護職との業務のすみわけができているのか、どんな利用者さんがいるのかなどは事前に確認しておいた方がいいですね。
肉体労働は少なめ
介護職とのすみわけが出来ている前提で言えば、日常生活援助がない分肉体労働は少なめ。
長年病院で働いてきた私は、トイレに行きたいと言われて自分が連れて行くのではなく、介護職員さんを呼んで連れて行ってもらうというのがなかなか衝撃でした。
40代、50代になっても無理なく働けそうだなぁと感じました。
日勤のみで残業も少ない
何事もなければ残業も少なく、定時で帰れる所が多いようです。
病院のように患者さんが入院しては退院していくというわけではなく、生活している利用者さんたちですから、毎日の変化は少なく仕事を覚えてしまえば時間内に終わらせられます。
夜勤がないというのは大きなメリットではありますが、オンコール体制があります。
看護師が複数人いればオンコールの日程は順番でしょうが、常勤が1名という施設だと1人でオンコールを対応しなければならない場合もあると思います。
なかには、朝報告してくれればいい程度のことでも電話がかかってくることも。
夜勤をする介護職の人たちの教育をしたいと思っても、夜勤専従の派遣さんとかだったりもするから、なかなか教育も出来なかったりという悩みを持つ人もいます。
老人ホームで働くデメリット
1人ひとりとじっくり関われて肉体的にも楽な職場ではありますが、デメリットもあります。
急変時の判断や対応を求められる
何かあったときの判断力を求められるのが施設看護師の宿命です。
なので、ある程度病院での経験や急変時対応のスキルは必要だと思います。
私が働いた施設だと看護師が3人いたのでまだいいですが、施設で働く看護師が自分1人だと相談する相手もいなくて自分の判断で対応しなくてはならないので、責任は重いですね。
スキルアップが難しい
治療の現場ではないため、ルーチンワークが多い施設での仕事だとなかなかスキルアップは難しく、自ら意識的に外部研修に行くなどの行動をとらなければ新しい知識を得る機会は極端に少ないです。
キャリアアップを目指したいのであればあまり施設での仕事は向いていないと思います。
単に夜勤がないとか残業がないということだけで選ぶのではなく、自分のキャリアをどのように構築していくか先々の事も考えて選ぶべきですね。
介護職との連携がうまくいかないことも
施設で働く看護師の多くが抱える悩みが介護職員との連携です。
介護の視点と看護の視点は似ているようで違います。看護師の指示がうまく伝わらないこともあったり。
私が働いた時、とある利用者さんが下血をしていました。その日数回にわたり下血をしていて、血圧もやや低めでした。
何度目かの下血の時、別の利用者さんの対応中だったため、「終わったら見に行くからベッドに横になってもらって、血圧を測っておいてください」と介護職員さんにお願いしました。
対応が終わって見に行くと、まだ車椅子に座ったままだし血圧も測っていませんでした。
「これからやるところでした。」との返答でしたが、下血をしているということの受け止め方がやはり看護職と介護職は違うのかなと感じた瞬間でした。
看護師は度々下血をしているということは、血圧が急激に落ちて意識レベルが低下する危険もあると考えますが、介護職員さんからすると何度も下血していても異常がないから今回も大丈夫だろうと思ってしまうのかもしれません。
また、介護職員さんたちによる看護師いじめもあるようです。
施設では圧倒的に介護職員さんの方が人数も多いですし発言力もあります。
しかし、給料は看護師の方がいいというのもあり、結構看護師に対してきつく当たる職員さんもいるようです。
老人ホームで働く看護師の給料事情
病院と比較すると夜勤がないぶん、少しお給料はお安め。
正職員で月給25万~30万円くらい。パートやアルバイトで時給1800円前後といったところでしょうか。
地域や施設の特色などによっても左右されてくると思います。
病院勤務よりは収入が落ちますが、その分夜勤や残業がなく子育てしながらでも働きやすいので共働きのお母さんとかはいいかもしれませんね。
老人ホームで働くやりがいと求められるもの
病院の看護はどうしても効率重視だったり、治療のために制限をかけざるを得ないこともあったりして、個別性のある看護を提供したいと思っても難しいこともたくさんありますよね。
でも老人ホームは利用者さんの生活の場でより生活に密着でき、入退院があるわけでもないので入れ替わりもほとんどなく、時間をかけてその人を理解し関わることが出来ます。
より個別性のある看護を提供できることはやりがいの一つではないでしょうか。
ただ、老人ホームで働くために求められるスキルもあります。
最も求められるものは、コミュニケーション能力だと思います。
介護職員とのコミュニケーション、利用者さんとのコミュニケーション。
様々な人たちとのコミュニケーションが必要で人の入れ替わりが少ない分、人間関係も変わらないため良好な人間関係を維持することは大切です。
病院と違い、医師がいない施設では医療に関することの責任は看護師が担います。
利用者さんの具合が悪くなった時の判断は看護師に一任されます。
そのためある程度の知識や救命措置に関するスキルなどはあった方がいいでしょう。
まとめ
施設で働く魅力は夜勤がなく、残業も少なく、1人ひとりとゆっくりじっくり関われるということです。
しかし、施設の特色によっては重症な人が多かったり、看護と介護の業務のすみわけが出来ていなかったりすると、仕事がたくさんで全然ゆっくり関われなかったりということになりかねません。
就職するときには利用者さんの重症度や施設の特色、看護と介護の仕事のすみわけの有無は必ず確認した方がいいでしょう。
病院である程度の経験とスキルを身につけたら、施設勤務でゆっくり働くというのも一つの働き方として良いと思います。
施設勤務に興味が出て来たら、単発派遣のアルバイトなどで一度、試しに働いてみるといいですよ。